キャリア・年収2026-07-14監修:山根一城(株式会社ポテンシャライト)

セキュリティエンジニアの年収相場と、上げるための現実的な打ち手

この記事の要点

「セキュリティって、結局いくらもらえる仕事なんですか」——面談でいちばん多い質問かもしれません。

皆さん、こんにちは。山根です。年収の話は生々しいので敬遠されがちなのですが、キャリアを選ぶうえで避けて通れないテーマだと思っています。今日は、僕がこれまで見てきた範囲での職種別の相場感と、年収を上げるために現実的に効く打ち手を、なるべく正直に整理してみます。数字はあくまで独自ガイドの目安値で、断言ではないことを先にお断りしておきます。

0. 結論:年収は「職種」より「担える範囲」で決まる

先に結論から書きます。セキュリティエンジニアの年収は職種によって相場の帯がありますが、その帯の中でどこに位置するかを決めるのは「対応できる範囲の広さ」だ、というのが僕の体感です。検知アラートをさばくだけの人と、分析して報告書を書き改善提案まで出せる人では、同じ職種名でも待遇がまるで違ってきます。資格や在籍年数は入口を開けますが、年収を動かすのは役割の格です。この前提を持って読み進めていただけると、以降の相場感が腑に落ちやすいと思います。

1. 職種別の年収相場(目安値)

まずは職種ごとの帯を並べてみます。繰り返しますが独自ガイドの目安値で、企業規模・ベンダーか事業会社か・都市部かどうかで上下します。

職種初級〜中級の目安上級・リードの目安
SOCアナリスト400〜550万円600〜800万円
脆弱性診断エンジニア500〜700万円700〜900万円
CSIRT・インシデントレスポンス550〜750万円800万円〜
セキュリティコンサル600〜800万円900〜1200万円
セキュアコード開発(DevSecOps)550〜750万円800万円〜

ざっくり見えてくるのは、下の帯どうしはそれほど差が大きくない一方で、上級層に行くほど職種による天井の高さの違いが開いてくる、という傾向です。コンサルやCSIRTは「事業判断に絡む」ぶん、うまく登れば伸びしろが大きい。逆にSOCは入口が広く未経験からも入りやすいですが、初級のまま留まると帯の上限にぶつかりやすい、というのが正直なところです。この帯はあくまで僕がこれまで見聞きした範囲の感触で、外資系や上場企業のマネジメント層になるとさらに上振れる例もありますし、地方や中小企業では下振れる例もあります。数字を鵜呑みにせず、自分の現在地との距離感を測る物差しとして使っていただければと思います。公的な待遇水準は厚生労働省の職業情報提供サイト(jobtag)なども参考になります。

2. なぜ同じ職種で年収が倍近く違うのか

「同じSOCなのに、なんで人によって数百万も違うんですか」とよく聞かれます。ここが今日いちばん伝えたい部分です。僕の見立てでは、年収の差は次の3段階のどこまで担えるかで説明がつきます。

料理でたとえるなら、第1段はレシピどおり作る人、第3段はメニューを設計して原価まで語れる人です。同じ厨房にいても、任される仕事も報酬もまるで違う。年収を上げたいなら、いまどの段にいて、次の段に上がるために何が足りないかを自問するのが近道だと考えています。多くの方は第1段で数年を過ごし、そのまま「経験年数は積んだのに年収が上がらない」と悩みます。年数ではなく、担える段が上がっているかどうか——ここを定期的に棚卸ししてほしいのです。

もう少し補足すると、段を上げるのに必要なのは大きな武勇伝ではありません。第1段の人でも、担当したアラートについて「なぜ発生したか」「他に似た兆候はないか」を一言添えて報告するだけで、周囲の見方は変わり始めます。第2段の入口は、日々の作業に「自分の考察を一行足す」という小さな習慣から開くことが多い、というのが僕の実感です。

3. 資格は年収にどう効くか

資格の話は別記事でも触れましたが、年収の文脈でも一度整理しておきます。結論として、資格は「年収を上げる」というより「選考の入口を開ける」「信頼を前借りする」ものだ、というのが僕の理解です。

情報処理安全確保支援士やCISSPを持っていると、書類選考の通過率や初回提示額の底が上がる感触はあります。特にコンサルや官公庁関連の案件では、資格が入札や体制要件に絡むため、持っていること自体が単価に反映される場面もあります。ただ、資格を取っただけで実務範囲が変わらなければ、年収の伸びはどこかで頭打ちになります。資格は鍵、年収を決めるのは扉の向こうでの働き——この順番を取り違えないことが大事だと思っています。逆に言えば、実務でしっかり第2段・第3段を担っている方が資格を後追いで取ると、実力と証明が噛み合って交渉力が一気に増します。取る順番よりも、実力と資格が揃っている状態をつくることが肝心だと考えています。

4. 年収を上げる、現実的な打ち手

では具体的にどう動くか。僕がふだんお勧めしている打ち手を、効きやすい順に並べます。

  1. いまの職場で「一段上の実務」を作る。転職の前に、分析や改善提案まで自分が担った実績を1つでも作っておく。これが次の交渉材料になります。
  2. 役割を格上げする転職を狙う。同じ職種内の横移動より、ベンダーSOCから事業会社の内製セキュリティへ、あるいはコンサルへ越境するほうが、対応範囲と裁量が広がって年収も伸びやすい傾向があります。
  3. 専門領域を1つ深掘りする。クラウドセキュリティ、OT/制御系、フォレンジックなど希少性の高い領域は、人が足りず単価が上がりやすい。広く浅くより、1本の柱を持つ。
  4. 資格で入口を補強する。上記の実績づくりと並行して、狙うポジションが要求する資格を押さえておく。

順番が大事で、1と3で実力の裏付けを作ってから2で環境を変えるのが、僕の体感ではいちばん失敗が少ない流れです。実績なしに提示額だけ吊り上げても、入社後にギャップが出て苦しくなりがちです。所要時間の目安で言うと、1の実績づくりは半年〜1年、3の深掘りは1年前後を見ておくと現実的です。焦って2から入ると、結局また転職を繰り返すことになりかねません。

実務の手順として、僕がよくお伝えするのは「棚卸し→一段上げ→言語化→市場確認」の4ステップです。まず1〜2週間かけて、いまの自分がどの段の仕事をしているかを書き出す。次に半年〜1年かけて、意識的に一段上の役割を取りにいく。そのうえで、担った実績を「誰に・何を・どんな効果があったか」の形で職務経歴書に落とし込む——ここまで来て初めて、求人票を見て市場の反応を確かめる。この順番だと、面談での話に具体性が出て、提示額の交渉も土台がしっかりします。

5. よくある失敗と、転職のタイミング

年収を上げようとして陥りがちな失敗を、いくつか挙げておきます。まず多いのが「提示額の高さだけで飛びつく」パターンです。高い提示額が「体制が薄い」「一人で全部やる」ことの裏返しになっているケースは珍しくありません。年収は上がったが激務で疲弊し、学びが止まって次のキャリアが描けなくなった、という相談を何度も受けてきました。対処としては、面談で「その待遇の背景にある体制と人数」を必ず確認すること。数字の裏側を聞ける関係を作れるかどうかで、入社後の満足度がずいぶん変わります。

次に多いのが「横移動を繰り返す」パターンです。同じ第1段の役割のまま会社だけ変えても、数十万円の上乗せはあっても帯の天井は変わりません。段を上げる意識がないと、年収は途中で頭打ちになります。三つめは「専門を絞れないまま器用貧乏になる」パターン。幅広く触れること自体は悪くないのですが、交渉の場で「あなたにしかできないこと」を語れないと、単価は上がりにくいのです。この二つの対処は共通していて、動く前に「次の職場で自分の段が上がるか」「柱になる領域が育つか」を自問することに尽きます。

参考までに、二つのケースを並べてみます。AさんはベンダーSOCで3年、会社を2度変えたが役割は一次対応のまま、年収は450万円から500万円へ。Bさんは同じSOC出身でも、在籍中に分析と月次報告を任され、その実績を持って事業会社の内製チームへ越境し、年収は500万円から680万円へ。差を生んだのは年数ではなく、担える段を上げてから動いたかどうかでした。あくまで僕が見てきた範囲の一例ですが、示唆は大きいと思っています。

タイミングについては、市場全体の需要が追い風のいまは越境がしやすい時期だと感じています。経済安全保障の流れもあり、事業会社が内製のセキュリティ人材を求める動きは続いています。動くなら、いまの職場で第2段・第3段の実績を一つ掴んだ直後が理想です。実績が新しいうちのほうが語りに熱があり、交渉材料としても効きます。数字は生活を支える大切な要素ですが、キャリアの寿命を延ばすのは環境のほうだ、というのが個人的な実感です。

6.(結論)年収は結果、育てるのは範囲

皆さんいかがでしたでしょうか。年収の相場を並べてきましたが、いちばんお伝えしたかったのは「年収は担える範囲の結果として付いてくる」という一点です。帯の中でどこに立つかは、資格でも年数でもなく、検知から分析、報告、改善提案まで自分がどこまで引き受けられるかで決まっていく。まずは今の職場で一段上の実務を掴み、そのうえで役割を格上げする転職を狙う。この順番なら、無理なく着実に伸ばせると考えています。サイバーセキュリティクエストでは今日もがんばりましょう。

よくある質問

Q. セキュリティエンジニアの年収はどのくらいですか

職種と経験で幅がありますが、僕の体感の目安ではSOC初級で400〜550万円、脆弱性診断エンジニアで500〜700万円、セキュリティコンサルや上級ポジションで700〜1000万円超が見えてきます。あくまで独自ガイドの目安値で、企業規模や事業会社かベンダーかによっても変わります。厚生労働省の職業情報提供サイト(jobtag)などの公的資料も併せて確認することをおすすめします。

Q. 資格を取れば年収は上がりますか

資格単体で年収が跳ね上がることは少ない、というのが僕の体感です。CISSPや情報処理安全確保支援士は選考の通過率や信頼を底上げしますが、年収を動かすのは「担える役割の広さ」です。検知だけでなく分析・報告・改善提案まで一気通貫でできると評価が上がりやすい。資格は入口を開ける鍵、年収を決めるのは実務範囲、という整理が近いと考えています。

Q. 年収を上げるにはどう動けばいいですか

同じ職種内での横移動より、役割を一段格上げする転職が効率的だと考えています。具体的にはベンダーSOCから事業会社の内製セキュリティ、あるいはコンサルへの越境で、対応範囲と裁量が広がるポジションを狙う形です。加えて、いまの職場で分析・改善提案まで担った実績を作っておくと、次の交渉材料になります。まず実績、次に環境という順番が失敗が少ないです。

監修:山根 一城(株式会社ポテンシャライト 代表)

IT人材業界20年、ギークリー創業を経て現職。個人として通算4,200名のキャリア面談を実施してきた経験に基づき監修しています。本文中の年収・難易度等は独自ガイドの目安値であり、個人の経験・企業により変動します。

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